日本のIT業界はこのままだとクラウドプレイヤーに席巻される


日本の大手を中心にしたIT企業/業界は、グーグルやアマゾン、セールスフォースなどが世界的に展開するクラウド(パブリック・クラウド)に対して、大企業ユーザ向けに特化し信頼性やセキュリティを重視した「プライベート・クラウド」「エンタープライズクラウド」の方向に向かっているようだ。


クラウドコンピューティングバイブル (ジョルダンブックス)

P.122
SI事業者はハードウェアベンダーの出番が再び巡ってきた。現在のITシステムの体制を出来る限り維持しながら、クラウドの良いところも取り入れようという発想である。それができるのは、従来の企業システム構築のノウハウをもつベンダーである。プライベート・クラウドを推進するのは今のところIBMNECといった従来型のIT企業である。

今さら聞けないクラウドの常識・非常識 (新書y 223)

P.184
国産クラウドが狙うべき市場はセキュリティや信頼性を過剰といっていい程に気にする大企業向けが中心になるでしょう。

日本のベンダーが提供するサービスには「国内にデータセンターがある」という大きな特徴があります。この特徴は国内ユーザーにとて、国産クラウドを利用する大きな理由付けになるはずです。
(中略)
国内にデータセンターがあればレイテンシについての問題をクリアすることができます。また、個人情報など重要なデータを国外に置いていいのか、という議論にも代表されるように法規制の関係で国内にデータを保管しなければならない場合もあります。そうした問題も国内にデータセンターがあるならクリアできます。

安心感もあるでしょう。日本人の技術者が言葉ではいい表せない「日本品質」で、きちんと運用してくれる、あるいは、万が一、何かあった際も日本語で問い合わせができる、カントリーリスク(治安の安定、政治不安、自然災害など)を考えなくてもよい、というのは日本のユーザにとっては大きな安心感に繋がります。

有力商材として台頭するGoogle製品、システムインテグレータの期待高まる : ITpro

 NEC日本IBM日本ユニシス富士通といった大手メーカーは、システムインテグレータとは異なり、グーグルの動きを一歩引いて見ている。

 現時点で、各社はグーグルの製品・サービスを積極的に手掛ける考えはないようだ。「企業向けシステムの構築を手掛けてきた当社と、グーグルはまったく異なる存在だ」。NECの東健二サービスプラットフォームシステム開発本部長は言う。
(中略)
 「国内の企業が、社内システムにグーグルの製品・サービスを本格的に採用するには、高いハードルがある」(富士通の有馬啓修サービスビジネス本部プロジェクト統括部長)。その理由は、「国内の企業はセキュリティや信頼性にかかわる要求水準が高いからだ」(同)。


果たしてこれでいいのか?


信頼性やセキュリティなどの課題については、すでに米国でも認知されてその対策は確実に進んでいる。(有名な"Above the Clouds: A Berkeley View of Cloud Computing"でも語られている)

日本のITベンダが現在の米国主要クラウドプレイヤーに匹敵するサービスレベルと価格でプライベート・クラウドを提供できるようになる前に、彼らの方が先に課題を克服してくるのではないだろうか。


米国主要クラウドプレイヤーが日本市場向けに日本にデータセンタを建てたり、「データはクラウドに置いた方が安全である」という事態になることも考えられなくはない。


米国主要クラウドプレイヤーが、日本のベンチャー系ITベンダを買収したり戦略的提携をしたりなどして、企業ユーザのクラウドへの移行のインテグレーションに直接・間接で乗り出してくるかもしれない。


中国がその英知、高いコスト競争力、模倣の巧さなどを武器に国家プロジェクトとして、もの凄い勢いで追い上げてくるかもしれない。




そこで! 丸山先生の言葉に深く共感!


日本人開発者は、50億人がクラウドを使う「第二の情報爆発」に備えよ : ITpro

パブリック・クラウドとプライベート・クラウドとを区別して、クラウドを分かったように思う風潮があるが、それでいいのか?

GoogleAmazonなどの)パブリック・クラウドが「発展したプライベート・クラウド」であるなら、我ら(日本人)のプライベート・クラウドが、パブリック・クラウドに発展を遂げる可能性を持っているのだろうか?

クラウドを、SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)やPaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)、IaaS(インフラストラクチャ・アズ・ア・サービス)に分類して、分かったように思う風潮もあるが、それでいいのだろうか?

日本におけるクラウドのビジネスの現状はどうか? 「プライベート・クラウド重視」「セキュリティ重視」「標準化重視」といった傾向がある。「パブリック・クラウドと同じ土俵で戦う」という考えがない。日本において、クラウド・ビジネスが遅れていることの反映でもある。


信頼性やセキュリティなどの高品質・高機能の売りにエンタープライズクラウドだけで戦うということは、『イノベーションのジレンマ』でいうところの破壊的イノベーションを軽視することに値するのではなかろうか。


クラウドビジネスに関して日本は米国には遅れているかもしれないが、グローバルでみれば米国に次ぐ位置にいるし、ITの大きな市場もある(アジアでみれば将来の巨大な市場がある)、優れたネットワーク環境もある、優れた技術もあり優れた技術者もいる。


日本のIT企業/業界はケツの穴の小さいことを言ってないで、臆することなく世界に討ってでるべきではなかろうか。そうじゃないと10年後にはホントに居場所がなくなるよ...



イノベーションのジレンマ 増補改訂版 (Harvard Business School Press) イノベーションへの解 利益ある成長に向けて (Harvard business school press) 明日は誰のものか イノベーションの最終解 (Harvard business school press) イノベーションへの解 実践編 (Harvard business school press)