第一次クラウドクライシスがやってくる
IT業界ではwikipedia:クラウドコンピューティングの話題が花盛りだが、日本では近い将来その第一次クライシスが訪れるのではないかと、ふと思った。
ユーザ企業の動き
ITのユーザ企業でもすでに一部ではGoogle, Amazon, Salesforceなどの米国主要ベンダのクラウドサービスの導入が始まっている。また、「早く」「安く」「使いたいときに必要な分だけ」「自社で資産を持たない」などのクラウドコンピューティングの利点が、ユーザ企業のシステム部門や経営層にも浸透し始め、付き合いの深い国内ITベンダに対し、クラウドコンピューティングでのITシステム構築/運用の打診/要望を出し始めている。
ITベンダの動き
世界規模(Webスケール)でクラウドサービスを提供する米国ベンダに遅れをとった日本のITベンダ(ハードウェアベンダやNTTなど)は、ユーザ企業からの要望を受けてなのか、クラウドにビジネスチャンスを求めてなのか、矢継ぎ早に参入を表明、サービスラインナップの発表を始めだした。
日本のITベンダには、米国主要ベンダのようなWebスケールで超巨大システムを構築/運用する技術は、おそらく備わっていないのではないかと思うのだが、プライベート・クラウド、高度セキュリティ対策、高信頼性などの付加価値らしきものを付けて、強み・独自色を出そうとしている。
まもなく日本ITベンダのクラウドサービスの導入/利用が始まりだす
米国主要ベンダのクラウドサービスの日本のユーザ企業への導入が進んでいくとともに、まもなく日本のITベンダのクラウドサービスも利用/導入が始まり出すだろう。
このとき日本のITベンダが提供するクラウドサービスは、多くの場合これまでの受託開発と大差ないスキームで提供されるのではないかと想像する。単にハードウェア/ソフトウェア資産をITベンダ側が保有し、そのコストを利用料形式でユーザ企業から貰うというお金の流れが変わるだけ。
第一次クラウドクライシスがやってくる
お金の流れを変えただけでこれまでの受託開発と同様のスキームで提供されるクラウドサービスは、導入後ある程度時間が経ってくると次のような問題が発生するのではないかと容易に想像できる。
- 当初SLAで契約したサービスレベルが確保されない(稼働時間保証や性能など)
- ITシステムの維持/保守やハードの保守切れなど当初予定外の費用が発生
- 柔軟なリソース追加ができない
- 複数ユーザで共同利用するITシステムで情報漏洩事件が発生
このような事態は、本格的なクラウドサービスを提供したことのない日本のITベンダが、ビジネスを急ぐあまりに、中身はこれまでの受託開発のスキームと同じで、表向きなんちゃってクラウド形式でサービス提供しようとすることで起きるのではなかろうか。
僕自身IT業界に身を置き、クラウドコンピューティングはユーザ企業・ITベンダを巻き込んで大変革をもたらすものだと思っている。そこにビジネスチャンスも多くあると思っている。
ビジネスを急ぐあまりに危機を起こし、大変革の流れに水をさすことにならないよう祈りたい。